「山も庭も動き入るるや夏座敷」
座敷から見る裏山も庭もみな青々としてまるで、この座敷に溢れ込んでくるような感じがする。松尾芭蕉が奥の細道の旅中、那須の黒羽に門人秋鴉(しゅうあ)を尋ねた際、招いてくれた秋鴉に対する挨拶吟。
夏座敷とは、自然に逆らわず感覚的な涼しさを演出する工夫でできるだけ家具調度を少なくし、部屋の明かりもやや暗めに押さえる。部屋をなるべく広々とさせるのが昔からの夏場のもてなしの秘訣とされています。今でも京都では夏場は縁側の戸や障子をはじめ、部屋のへだての建具をはずし、座敷一面に網代(あじろ)を敷いてひんやりとした雰囲気で客を迎えます。昔は、どこの家でも初夏の大掃除が終わると炬燵を撤去し夏座敷に作り変えたそうです。今ではこのような習慣はなくなってしまいましたがこういう気持ちは大切にしたいものです。