伊藤平商店について


唐織:沙綾型有職紋唐織:柳唐織:四季の色草

伊藤平商店はながらく能衣装に用いられる唐織の製造販売を行ってまりました。唐織物は多色の色糸を生地上にあたかも刺繍のように織り出す織物で使う色糸の多さ、色使いの自由さは他の織物には類を見ない織物です。伊藤平では永年唐織物の製作で培って参りました絹糸そ染める技術、日本の伝統的な色を用いて風呂敷、袱紗をお染めしています。唐織りは先染(さきぞめ:糸を染めてから織る)、風呂敷は後染(あとぞめ:生地を織ってから染める)の違いはありますが、糸と布地の差はありますが絹を染めることは染料も技術も大きな相違はなく唐織で培いました色の技術をもとに丹後縮緬の白生地製造の山藤織物工場とのタイアップで風呂敷を一枚からお好きなお色にお染めしております。

資料が火事で消滅してしまい明確な創業時期は不明ですが、現在の当主で五代目となります。それまでは総合的な呉服問屋でしたが第二次世界大戦後は特に能衣装に用いられる唐織物の帯、袱紗等の小売を行い、日本政府より象牙海岸共和国に贈った能衣装の制作並びに皇室にも御御帯(おみおび)、お袱紗等をお納めしております。

能:黒竹節夫氏
能:演者(黒竹節夫氏)

若松華瑤と山口茂三郎

父(先代)が若松華瑤と山口茂三郎の共同制作の唐織だけを商うというこだわった商売をしておりましたので私は他の帯、他の唐織を見る事なく若松華瑤×山口茂三郎の唐織だけを見て育ちました。私にとっては当たり前のものであったのですが後に知り合ったグラフィックデザイナーに「背筋が震えた」と評価をもらい初めて客観的に若松華瑤×山口茂三郎の作品の素晴らしさを知ることとなりました。

若松華瑤(大原「願原荘」主宰)は伊藤平三の息子で先代六豊の叔父に当たります。西陣の殆ど全ての織屋が若松華瑶の図案を買って帯を作っていたほど若松華瑶は卓越した図案家でした。「意匠に困ったり、デザインが浮かんで来ないなんてことはない」むしろ「次から次へと湧いてくる図案の整理のほうが難儀する」と言い切る天才図案家でした。
そして、この図案の天才と一緒に唐織を作ったのがもう一人の天才山口茂三郎氏でした。一般的には若松華瑤の名前だけが出ていることが多いのですが、二人のコラボレーションなくしては若松華瑤の作品は生れることはありませんでした。それまで図案家として図案を作成、販売していた若松華瑶が自らの作品として唐織の制作する際に選んだパートナーが山口茂三郎氏でした。図案家の図案を織物にするためには織物意匠としてのアレンジや配色等図案を織にするための創作が必要で二人の天才のコラボレーションにより若松華瑤×山口茂三郎の唐織作品が生まれました。

【 若松華瑤プロフィール 】
明治28年 京都市に生まれる
明治43年 西陣織物業「山岸重助商店」入社
大正12年 西陣織物業「若松清一商店」開店
昭和5年  第一次能装束研究会を興す
昭和33年 行司装束第1号を制作、木村庄之助氏に贈呈
昭和38年 世阿弥誕生600年を記念して昭和能装束前期50作の制作開始
昭和39年 ニューヨーク世界博覧会に展示出品
昭和41年 昭和能装束後期50作制作開始
昭和42年 昭和能装束前期50作完成、京都市美術館にて展覧
昭和49年 昭和能装束後期50作完成、「昭和能装束百種」完成
2月24日一般公開を前に京都市北区の富田病院にて急逝、享年78歳
京都市美術館にて「若松華瑤遺作昭和能装束百種展」開催

【 山口茂三郎プロフィール 】
山口成三郎氏は、山口伊太郎、山口安次郎両氏を兄に持つ三男として明治45年5月に生まれ、西陣成逸小学校を卒業の後、昭和18年に織屋として独立し、当初より古代能装束の復元・研究にあたり、昭和30年代より染織図案家若松華瑶とともに昭和の能装束百種(唐織・厚板・狩衣・長絹・舞衣)の内80数点の製織に携わる。

京都織物株式会社と明治43年の長者番付

現在は見る影もないほど小さくなっておりますが明治時代にはとても大きな店で明治43年の日本国の長者番付に記載されていました。また、その当時の当主の伊藤平三は日本最初の株式会社である「京都織物株式会社」の大株主であり、また監査役をつとめておりました。京都織物株式会社は、天皇陛下が東京にお移りになられた際に頂いた賜り金を元に渋沢栄一公がとりまとめ役となり東京、京都の財界が日本の織物産業の近代化を目指して作った織物会社です。

kinmanka1910_M43s480
明治43年金満家一覧:PDFがダウンロードされます

明治43年の日本の金満家(長者番付)です。右側の下から三段目、右から5件目の伊藤平三が伊藤平の二代目で当代の曽祖父です。近代産業の創世記の日本で渋沢栄一公を始め、岩崎、三井、住友、安田、鴻池、徳川、毛利等歴史を代表する人物の名を見る事ができます。

伊藤平商店の正絹ちりめんの袱紗、風呂敷。一枚からお好きな色にお染めします。